202301

助産学専攻科1回生の学生・教員と。
前列右側が中田先生です。
※写真撮影時のみマスクを外しています。

佐久大学 助産学専攻科
中田 覚子

北里大学看護学部看護学科を卒業後、長野県内の総合病院に助産師として勤務。その後、北里大学大学院看護学研究科修士課程を修了し、佐久大学看護学部にて看護師養成教育に携わる。2022年4月より現職に就き、助産師養成教育に携わる。

“生活”の視点を大切にした助産師の養成を目指して

 近年、女性の高学歴化やライフデザインの多様化による晩婚化・晩産化により、ハイリスク妊産婦が増加しており、より一層、妊産婦の多様なニーズに対応できる助産師の実践能力の強化が求められています。このような社会背景を受け、本学の助産師養成課程は、より専門性の高い助産師教育を目指し、2022年4月に「別科助産学専攻」から「助産学専攻科」に課程変更をし、再出発いたしました。
 記念すべき1回生は、COVID-19感染拡大の影響をダイレクトに受けており、入学した学生の大半が、看護大学時代に十分な臨地実習経験を積むことができておらず、産科病棟での臨地実習経験が皆無である学生も含まれる状況でした。周産期医療という臨床現場のイメージ化およびコミュニケーション能力の向上が直近の課題となり、同僚の先生方と試行錯誤しながら、シミュレーション演習の時間を最大限確保し、昨年よりも場面設定数を増加させ、新たに臨床助産師による模擬産婦の導入を試みました。実際、その後の臨地実習において、シミュレーション演習で行った場面に類似する対象を受け持つ学生もおり、臨地実習前の準備として一定の効果が得られたと感じています。

 さて、私自身が現在の助産師養成教育の中で大切にしているのは、“生活”の視点をもって対象をみることができる助産師の養成です。看護職者として“生活”の視点を持つことは、当たり前のことではありますが、医学的ハイリスク妊産婦が増加している中では、身体的側面に焦点をあてた支援が中心となりやすい傾向があります。しかしながら、健やか親子21において「妊娠・出産について満足している者の割合」の上昇が目標の1つに掲げられている通り、日本人女性の妊娠・出産への期待・希望は大きいことが予測され、妊産婦のQOLの維持・向上を目指した支援が重要だと感じています。
 私自身、「妊婦のQOLの維持・向上」をテーマとして研究を続けています。妊娠・出産は“病気”ではありませんが、心身に大きな変化が生じ、家族関係や社会的役割にも変化が生じる時期です。妊娠初期から妊娠全期間を通じて、単に正常な妊娠経過をたどることだけでなく、対象の“生活”に目を向け、妊婦が自身の妊娠生活に納得・満足できるよう継続支援していくことが、妊産婦のQOLの維持・向上に寄与すると考えています。この視点を本学の助産師養成教育にも取り入れ、個々の妊産婦の経験を尊重した全人的なケアを行うことができる助産師養成を目指していきます。

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