202109

大学の屋上で撮影しました。
長崎のシンボルの稲佐山が背景です。

長崎大学医学部保健学科看護学専攻臨床看護学(成人看護)
大山 祐介

長崎大学医療技術短期大学部看護学科を卒業後、長崎大学病院の看護師として勤務しながら、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻修了(修士 看護学)。2018年山口大学大学院医学系研究科保健学専攻博士後期課程に入学し、2021年9月修了予定(博士 保健学)。2016年より現職。

私のキャリア、過去の想いを将来の研究へとつなぐ。
患者のコンフォートを目指した研究活動。

 私が看護学における教育・研究職を目指したきっかけと現在の研究活動について、ご紹介させていただきます。看護師として病院の臨床現場で約15年、長崎大学において教育と研究に携わりはじめて約5年が経過しました。なぜ、教育・研究職になろうと思ったのか、きっかけを振りかえってみますと、思い出すのは看護学生時代の友人(同級生)のことばでした。その友人は「病院で目の前の患者を助けるのも大切だけど、研究をすることで多くの人の助けになるのでは?」と話していました。何か進路に悩んでいて助言をもらったというよりは、何気ない会話のなかでの一言だったように思います。その言葉が頭の片隅にあったこともあり、脳神経外科病棟、整形外科病棟での臨床経験の後に、社会人として長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻修士課程に進学しました。修士課程の研究は、「周手術期を通してとらえた人工股関節全置換術を受ける患者の病気および手術と生活体験の分析」というテーマで質的記述的研究を行いました。人工股関節全置換術後患者の周手術期の体験について手術前、手術後、退院後の合計3回、5人の患者にインタビューを行いました。修士課程修了後は、脳卒中ケアユニットや救命救急センター等で看護師として勤務を続けながら、臨床研究の活動もしてきました。しかし、自分自身の目に見える成果も少なく、看護師としてこれから何をしたいのか、臨床現場で看護師として続けていくか、続けるなら専門資格を取得するのか、大学の教員を目指すのかなど、明確な目標がなくおぼろげに考えていたことを思い出します。そのような折、修士課程でお世話になった先生から大学教員の公募のお話をうかがい、友人のことばを思い出すとともに教育・研究職としてチャレンジすることを決心し、現在に至っています。
 大学の教員として勤務し始めたばかりのころ、大学院生の講義を聴講した際にKolcaba1)のコンフォート理論に出会いました。コンフォート理論を学ぶうちに、果たして自分は臨床現場で、特に救急搬送される患者に対して、意図的なコンフォートケアができていたのだろうか。また、患者に対して自分が行っていたケアやリハビリは患者の苦痛になっていたこともあったのではないかと感じました。これらのクリニカルクエスチョンがリサーチクエスチョンとなり、山口大学大学院医学系研究科保健学専攻博士後期課程に進学しました。現在、クリティカルケア看護領域におけるコンフォートの概念モデル構築を目的に研究に取り組んでいます。これまでに、文献的アプローチとして、クリティカルケア看護領域におけるコンフォートの概念分析2)、質的統合として、急性・重症患者看護専門看護師が患者のコンフォートに向けたケアにかかわる体験3)、そして量的統合として、重症患者のコンフォートの構成概念妥当性4)を看護師の視点をもとに検討しました。妥当性が確認できたコンフォートの要素(症状の緩和、自立性、平静、満足)はクリティカルな状況の患者をアセスメントする視点になると考えています。概念分析や看護師を対象とした研究によって、あいまいであったクリティカルケア看護におけるコンフォートの輪郭が表れてきたと感じています。しかしながら、本来コンフォートは患者の主観であるため、これからの研究ではクリティカルな状況にいる患者が、コンフォートをどのように知覚しているのかについて明らかにしていきたいと思います。このように研究を積み重ねることによって、多くの患者の回復や臨床での看護実践に貢献していきたいと思います。

  • 1)Kolcaba K.(2003)/太田喜久子(2008).コンフォート理論―理論の開発過程と実践への適用.東京: 医学書院.
  • 2)大山祐介, 永田明, & 山勢博彰. (2019). クリティカルケア看護領域におけるcomfortの概念分析. 日本クリティカルケア看護学会誌, 15, 19–32.
  • 3)大山祐介, 永田明, & 山勢博彰. (2020). 急性・重症患者看護専門看護師が患者のcomfortに向けたケアにかかわる体験. 日本クリティカルケア看護学会誌, 16, 54–64.
  • 4)Oyama Y, Nagata A, & Yamase H. (2021). Verification of construct validity for comfort indicators of critically ill patients. 日本クリティカルケア看護学会誌, in press.

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