聖路加看護大学(現・聖路加国際大学)卒業後、都内の病院、長野県内の病院で助産師、看護師として勤務。聖路加看護大学大学院修士課程修了後、長野県内の病院勤務を経て、2015年より現職。
私は現在、学部2年生に母性看護学概論で「DV・児童虐待」を、学部3年生に母性看護援助論を通して、妊娠・分娩・産褥/新生児について授業を行っています。学生から「母性看護の授業で、DVや児童虐待について学ぶということは意外だった」という感想をもらうことがあります。しかしDVや児童虐待が、望まない妊娠や産後うつ、ボンディング障害など、母子に及ぼす影響を考えるとDVや児童虐待を母性看護のなかで学習するということは、私のなかではごく当然のこととしてとらえていたので、学生からこのような感想をもらうことの方が意外でした。
私が最初にDVや児童虐待に関して関心を持ったのは14歳頃でした。これは私が14歳頃にDVや児童虐待のニュースが新聞やテレビで盛んに報道されていたことに起因すると思います。私はそれらの報道を目にするたびに胸が締め付けられ、とてもつらい気持ちになりました。当時は被害を受けられた方の気持ちに自分の気持ちが若干同調していたのだと思います。現在の仕事の中核である母性看護や助産について関心を持ったのは、自分の将来を考えるようになった高校生の頃です。高校生の頃にもDVや児童虐待に関して関心を持っていたことは変わらなかったのですが、母性看護や助産に強く心惹かれ、その結果、助産師になるという進路を選びました。その後、助産師になるための勉強をしている時に、助産師が行うDV被害に遭われた方の支援について学習する機会がありました。気持ちに同調し、「つらい」と感じるだけだった私が、「専門職者として被害に遭われた方の力になることができる(かもしれない)!」と気づきました。この時には助産師という仕事を選んで本当に良かったと感じたことを覚えています。ですが学べば学ぶほど、問題は根深く、難しいことであることに気づかされました。また、臨床で助産師として勤務していた時に対応した方々に、最善の支援ができたのか、もっとできたことがあったのではないかと今でも自問します。現在は少しでも前に進むために特定非営利活動法人 女性の安全と健康のための支援教育センターが行っている研修会に参加しています。
現在、大学の教員となり、DVの被害に遭われた方々のごく間近でケアをすることはなくなりました。ですが学生に、授業を通してDVについてや被害に遭われた方々への支援を伝えることで、このことに取り組もうと思える仲間を増やしたいと思っています。そのことが被害に遭われた方々への間接的な支援となると考えています。また一方で、DVの問題に研究を通して取り組もうとすると、事の重大さに尻ごみをしてしまい、なかなか前に進まないことも事実です。ですが、もうずっとDV被害に遭われた方々に対して「なにか力になれることはないか」と思い続けてきたので、本腰を入れて取り組もうと思っています。