看護理工学会次世代委員会の仲間と。
右から2番目の方が吉田先生です。
広島大学医学部保健学科卒業。東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻修了(保健学博士)。2012年~東京大学大学院医学系研究科助教、特任講師を経て、2019年4月より現職。専門はコンチネンスデザイン、骨盤底リハビリテーション。
入院してきた患者さんの持参薬が一包化されていて、何が入っているのかわからない。夜勤の看護師が、入院当日に、一包化された多数の薬の中身を本を片手に調べ、手作業で中止薬をコツコツと取り除く。
こんなエピソードを臨床のあるあるとして、よく聞きます。
これは、「看護」でしょうか?
患者さんが安全に正確に医療を受ける環境を整える点では看護でしょう。しかし、この業務によって看護師が疲労して集中力が低下してしまえば、どうでしょうか?この患者さんだけでなく、他の患者さんの安全な療養生活が崩れてしまうかもしれません。
看護の現場は、医療の高度化に伴い最先端の医療機器の管理が強いられる一方で、日常生活で使っているテクノロジーすら導入されておらず、先ほどの例のようなプリミティブな人海戦術が繰り広げられている場面が多々見受けられます。
看護は応用科学の一つであり、基礎科学を基盤としつつ、医学などの周辺分野や、工学と協働して「ひとが生きること」を支えるものであるはずです。技術革新が日進月歩で進む今日において、看護にも技術(テクノロジー)を積極的に取り入れ、看護の技術(スキル)をさらに進化・深化させることが望まれます。
これはなにも、表面的な業務の効率化を望んでいるわけではありません。技術を創り、より安全・正確に看護をすることで効率化できた時間を、看護師という生身の人間でなければできないケアに割き、ひとが“自分らしく”生きることに“寄り添い”支えましょうと言っているのです。そのような技術のアイディアを看護師自身が発信し、研究や産学連携により製品化し、患者に看護を届ける、それが次世代の看護だと考えます。
このような考えを持つことができたのも、院生~助教・講師時代に、工学や分子生物学などを背景とする研究者との学際的な研究を通じて、新たな看護技術の開発に打ち込めた経験が大きかったと思います。現在、その時に開発した技術は、次世代看護教育研究所などを通じて看護師に届けられるようになりました。また、看護理工学会次世代委員会の1人として、看護の研究者・実践者のみならず、工学の研究者や企業の方々などと、看護に使えるものづくりや次世代の育成をしています。そしてうれしいことに、新たに赴任した東北大学でも共感してくれる仲間に出会い、この取り組みを展開できつつあります。
「次世代」は時が流れれば現代になり、つぎの「次世代」がやってきます。つぎの「次世代」での看護は、また違うものになっていくでしょう。更なる未来の看護を創造するために、今を越える努力を日々続けていきたいです。